ネーミングライツのはじまり

ネーミングライツの売買は、1990年代後半のアメリカで、スポーツ施設などの名称に企業名を付けるビジネスが広がったことから定着していきました。日本の公共施設にネーミングライツが導入されたのは2003年で、東京調布市にある「東京スタジアム」が最初です。JリーグのFC東京・東京ヴェルディの本拠地で、「味の素スタジアム」と変更されました。

大型のスポーツ施設から始まったこともあり、ネーミングライツと聞けば、やはりプロ野球やJリーグなどのスタジアムの名称が浮かびますよね。このクラスの権利となると、企業側には年間数千万から億単位の契約金がかかりますが、知名度や好感度アップが期待され、「十分に効果的な広告だ!」と考えられてきました。

しかし、ここ10年ほどの間に企業側はその費用対効果を厳しく見るようになり、その結果、契約の打ち切りや更新時の契約金の減額という動きが出てきています。

「提案型」ネーミングライツ

そんななか、ここ数年で増えてきたのが提案型のネーミングライツです。自治体が施設を選んで権利を売り出すのではなく、施設・愛称・契約金などの具体的な内容について、企業側の提案を呼びかける募集方法です。

この取り組みを最初にスタートさせたのは、横浜市です。2009年には、横浜市戸塚区にある横浜薬科大学が、隣接する俣野公園(横浜ドリームランド跡地)にある野球場のネーミングライツの導入を提案し、10年間の契約を結びました。野球場は「俣野公園・横浜薬大スタジアム」となり、今年の春には10年間の契約延長となりました。さらに、2016年には市営の農地付き公園を「ハマヤク農園」として10年間の契約しています。大学側は、近隣住民に向けた体験会や講座などを開くことで、地域と共に歩む大学としてイメージアップにもつなげています。

また、名古屋市も2014年から随時この提案型ネーミングライツを募集しており、市役所庁舎や交通局・病院局・上下水道局の管理する施設を除いたすべての施設が対象となっています。なかでも歩道橋のネーミングライツ契約数は多く、2019年6月1日現在で約100件となっています。

もちろん、横浜市や名古屋市のような例ばかりというわけではありません。ネーミングライツの売買による資金は、主に自治体が管理している公共施設の維持費などに充てられています。費用を工面しなければならない自治体にとって、売買そのものは有効な手段とはいえ、なかなか軌道に乗らずに苦戦しているケースも多いようです。

ネームングライツの持つ可能性

自治体の課題は、地域貢献に意欲的で、なおかつ契約を長く続けられる力がある企業との関わりをどのように作っていくのかである、と言われています。また、契約が実現しても地域住民の理解がなければ、実現が難しくなってしまうこともあるため、皆にどのように関心を持ってもらうかという問題もあるとされています。

また、企業の方は、ネーミングライツを「ブランドを創っていくための投資」として考え、長期的なイメージをもつ必要があると言われています。

自治体と企業と住民のコミュニケーションを図りながら、公共施設をどのように活かしていくのか。ネーミングライツを考えることは、これからの「まちづくり」を考えるきっかけになりそうです。

参考資料

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO12049500U7A120C1TZD000/
http://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000060456.html
http://www2.hokurikutei.or.jp/lib/shiza/shiza08/vol20/topic2/data/

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